明治〜昭和初期に陸軍参謀本部陸地測量部が作成した五万分の一地形図です。等高線・集落・道路・植生が精密に描かれ、戦前の日本の国土をありのままに記録しています。
データの旅路
陸軍参謀本部(明治〜昭和)
→
戦後に米軍が接収
→
スタンフォード大学に寄贈
→
オープンデータとして公開
→
日本版Map Warperがジオリファレンス
→
OH3で閲覧可能に
この画面をOH3で開く →
日本陸軍が測量・作成した地形図は、戦後アメリカ軍に接収されました。その地図群はやがてスタンフォード大学の図書館に収蔵され、「外邦図コレクション」としてデジタルスキャン・オープンデータ化されました。そして日本の歴史GISプロジェクト日本版Map Warperがこれらを一枚一枚ジオリファレンス(位置合わせ)し、現代の座標系に乗せたタイル画像としてOH3に取り込まれています。
データの規模
全国の五万分の一地形図1,000枚以上を収録。地図の範囲がビューポートに重なると自動でタイルが表示され、各図幅の中心にラベルが表示されます。ズーム7以上で閲覧可能です。
表示方法
▶ 左上レイヤーアイコン → 「旧版地形図」をオン
ズーム7以上に拡大すると、ビューポート内の図幅が自動表示されます。スワイプ比較を使えば、戦前と現代の地図を並べて変遷を確認できます。
第二次世界大戦後、アメリカ陸軍地図局(AMS: Army Map Service)が占領統治のために作成した日本の地図群です。終戦直後の都市の姿を、英語の地名表記とともに記録した貴重な歴史資料です。
データの旅路
米陸軍地図局(1943〜1954)
→
テキサス大学オースティン校
→
Perry-Castaneda Libraryで公開
→
OH3がタイル化して配信
この画面をOH3で開く →
AMSは1942年に設立され、戦時中に約5億枚もの地形図を製造した米国防総省の軍事地図作成機関です。日本では1943〜1954年にかけて、占領行政や都市復興計画のための地図を作成しました。特に1:12,500スケールの都市計画図(City Plans)は全国145都市以上をカバーしており、空襲被害の記録、占領期の施設配置、そして復興の出発点を読み取れる一次資料です。
収録シリーズ
- Japan City Plans 1:12,500(1945〜1946年)— 東京・大阪・名古屋など主要都市の詳細図。戦災範囲が赤いハッチで記録されている
- Japan 1:250,000 Series L506(1954年〜)— 全国を網羅した中縮尺地形図
- Central Japan Series L571(1943年)— 中部日本の地形図
- Southern Japan Series L591(1943年〜)— 南日本の地形図
データはテキサス大学オースティン校 Perry-Castaneda Library Map Collectionで公開されています。OH3では各都市のCity Planをタイル化し、現代の地図に重ねて閲覧できるようにしています。
表示方法
▶ 左上レイヤーアイコン → 「米軍地図」をオン
都市名を選択すると、その都市のCity Planが表示されます。英語表記の地名と現代の地名を見比べると、街の変遷がわかります。
歴史的背景
広島のCity Planには、完全壊滅地域と部分壊滅地域が赤いハッチで区別されています。これらの地図は軍事資料を超え、戦災と復興の記録、占領期の都市計画、そして現代につながる国土形成を理解するための貴重な歴史資料です。
江戸時代末期(慶応年間頃)の約7万村の境界・石高・領主情報を現代の地図上に可視化するレイヤーです。各村の石高(税の基準となる米の生産高)や、複雑に入り組んだ藩の領地関係を色分けで直感的に把握できます。
データの旅路
旧高旧領取調帳(明治初期の調査記録)
→
国文学研究資料館がDB化
→
GIS研究者がポリゴン化しGitHubで公開
→
OH3がPMTilesで配信
この画面をOH3で開く →
「旧高旧領取調帳」は明治初期に各府県が作成した調査記録で、幕末時点での各村の石高・所属藩を記載しています。国文学研究資料館がこれをデータベース化し、さらにGIS研究者(GitHub: Kyudaka_agrivillage)がポリゴンデータとして整備しました。OH3ではこれをPMTilesに変換し、高速に配信しています。
6つの色分けモード
- 標準 — 石高に応じた色分け
- 藩で色分け(2パターン)— どの藩の領地かで色分け。飛び地や相給(複数の領主が同一村を分割支配)が可視化される
- 令制国で色分け — 律令制の国境界で区分
- 県で色分け — 明治以降の県境界で区分
- 郡で色分け — 郡単位の区分
- 石高(面積割)で色分け — 面積あたりの石高で生産性を可視化
1つの村に最大8つの領主が重なる「相給」関係も表現されており、江戸時代の複雑な土地支配構造を体感できます。3D高さ表示をオンにすると、石高が高い村ほど高く表示され、生産力の地域差を直感的に把握できます。
表示方法
▶ 左上レイヤーアイコン → 「幕末期近世の村」をオン
ズーム10以上で村名ラベルが表示されます。村をクリックすると、村名・石高・領主などの詳細情報を確認できます。色分けモードはレイヤー設定パネルで切り替え可能です。
小字(こあざ)は、江戸時代に村が土地を管理するために付けた最小単位の地名です。1872年(明治5年)の地租改正で「小字」として正式に整理されましたが、都市化・住居表示制度の実施・区画整理により急速に消滅しつつあります。このレイヤーは、失われゆく小字を保存し未来に継承するプロジェクトのデータを可視化しています。
データの旅路
江戸〜明治期の土地台帳・地籍図
→
koaza.netがデジタル化
→
OH3がPMTilesで配信
この画面をOH3で開く →
関東小字地図プロジェクト(koaza.net)は2023年に公開されました。東京都の23区西部から始まり、大田区・武蔵野市・三鷹市・川崎市へと範囲を拡大しています。小字の名前には土地の地形・歴史・用途が凝縮されています。
小字名が語る土地の記憶
- 「谷戸」「窪」「沢」 — 低地・湿地を示す。水害リスクの手がかりにもなる
- 「台」「丘」「山」 — 高台・台地を示す
- 「新田」「開」 — 新しく開墾された土地
- 「古屋敷」「城下」 — かつての居住地・城跡
- 「馬場」「的場」 — かつての軍事・訓練施設
OH3では小字名・旧村名・郡名での検索に対応しています。気になる地名を入力すると、該当する小字が地図上でハイライトされます。
表示方法
▶ 左上レイヤーアイコン → 「関東小字地図」をオン
小字の境界がホットピンクのラインで表示されます。ズーム14以上で小字名のラベルが表示されます。レイヤー設定パネルから名前で検索も可能です。
今昔マップ on the webは、明治期から現代までの旧版地形図を時系列で閲覧・比較できるサービスです。埼玉大学教育学部の谷謙二(たに けんじ)教授(1971-2022)が2005年から約17年かけて構築し、日本の地理教育とGIS研究に計り知れない貢献をしました。
データの旅路
国土地理院の旧版地形図
→
谷謙二教授がスキャン・タイル化
→
ktgis.netで公開
→
OH3がタイムスライダー付きで統合
この画面をOH3で開く →
谷教授は2005年にWindows版「今昔マップ(首都圏編)」をDVDで配布するところから始め、2013年にWeb版を公開。2019年には全都道府県庁所在地をカバーするまでに拡大しました。2022年、高校で「地理総合」が必履修化されたまさにその年に、谷教授は51歳で急逝。現在は東京大学がサービスを継承し、ktgis.netで運営が続けられています。
谷謙二教授の功績
谷教授は今昔マップだけでなく、無料GISソフト「MANDARA」の開発でも知られ、2010年に日本地理学会賞(地理教育部門)を受賞しています。「誰でも無料で歴史地図にアクセスできるべき」という信念で17年間データを積み上げ続けた、日本のオープン地理情報のパイオニアです。
OH3での今昔マップ
OH3は今昔マップのタイルを取り込み、独自のタイムスライダーUIを搭載しました。
- 全国67地域・320以上の時代をカバー
- タイムスライダーで年代をスライドして切り替え
- 自動再生 — 4段階の速度(遅い/普通/速い/超速)でアニメーション再生
- 年代リスト — 各地域の利用可能な年代を一覧表示・ワンクリック切り替え
表示方法
▶ 左上レイヤーアイコン → 古地図等 → 今昔マップ → 地域を選択
レイヤーをオンにすると「タイムスライダーを開きますか?」と確認が出ます。スライダーで年代を切り替え、再生ボタンで自動アニメーション。街がどう変わったかを時間旅行のように体験できます。
この5つのレイヤーに共通するのは、異なる時代に異なる人々が作った資料が、デジタル技術とオープンデータの理念によって現代の地図上に蘇っているということです。
- 旧版地形図は太平洋を渡ってスタンフォード大学に眠り、オープンデータとして復活した
- 米軍地図は占領統治の実務から生まれ、テキサス大学で公開され、戦災記録として価値を持ち続ける
- 幕末期の村データは明治の調査記録からGIS研究者がポリゴン化し、GitHubで世界に公開された
- 小字地図は消滅しつつある地名を有志が掘り起こし、デジタルアーカイブとして保存している
- 今昔マップは一人の地理学者が20年かけて全国67地域を整備し、時代を行き来できるタイムスライダーとして蘇った
いずれもOH3独自のデータではなく、世界中の研究者・有志がオープンに公開した成果をOH3が取り込んで可視化したものです。データが海と時間を超えて繋がる——それがWebGISの醍醐味です。
歴史レイヤーを体験してみましょう
左上レイヤーアイコン → 各レイヤーをオン
OH3を開く